因果深層学習 meta-Learner, TARNet, CFRNet, DragonNet

2026/3/18

 因果推論において、処置の個別の効果を把握するのに、ITE(Indivisual Treatment Effect)あるいは、CATE(Conditional Average Treatment Effect)を計算します。伝統的な機械学習の方法を使って因果の効果を計算する場合は、対象となるデータに適合する機械学習モデル、たとえば、ツリーをもとにした方法やニューラルネットワークを使います。本稿ではNeyman-RubinのPOフレームワークを使って、バイナリの処置効果の推定のために、meta-learne ...

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MMT信仰が招く"アリとキリギリス"の結末

2026/3/9

「潜在成長率に合わせて通貨を発行し、増えた分が政府支出となる」これは、MMTと日本でリフレ派と呼ばれる人々の主張を端的に示したものです。  MMTの理論的な背景は、貨幣を国家の創造物と捉えるくらいで、その他は主流派の経済学と大差ありません。彼らは”政府債務の拡大が自国通貨建てであるかぎり、信用リスクや通貨の信任の問題は発生せず”、”財政赤字を全く気にする必要はない”と主張します。 政府支出の制限 ー アリとキリギリス  MMTは単一の理論ではなく、貨幣に関するいくつかの考え方の集まったものです。日本で話題 ...

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外為市場介入クレプトピア3:公金の行方

2026/2/18

 現在も日本の担当者がドル円為替レートの推移に関して介入を示唆する発言をすることがあります。  もし、実際には2026年1月23日に外国為替市場へ単独介入が実施されていた場合、どういうことが起きているかを明らかにしておきます。  what if ~ のCounterfactual推論と捉えてください。 外国為替市場ドル売り介入  外国為替市場への介入については、実際の処理はよく知られていません。図1を例に、どのように処理されているか見ていきましょう。 図1 ドル売り介入の場合  外国為替市場介入は、以下の ...

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外為市場介入クレプトピア2:繁栄への月並みの経路

2026/2/5

1月23日のドル円為替市場  かつてある公的機関から事実とは異なる内容が、連日発表されていました。現在から、80年以上前のことです。  現在、2026年1月30日の発表によると、先月2025年12月29日から2026年1月28日までの外為市場介入はなかったことになっています。  1月23日の日銀総裁会見後のドル円為替レートの推移には、大きな建て玉の裁定取引の履歴が記録されています。ドル売りの投入資金は反対売買で全額決済されています。  数日前、1月20日に米国で長期金利が上昇しています。まとまった量の米国 ...

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外為市場介入クレプトピア:美しい国、日本

2026/1/26

 クレプトピアは クレプトクラシー(Kleptocracy)とユートピア(Utopia)を組み合わせた造語です。Kleptocracyは権力者が国の富を奪うことを指します。  1月23日、日銀総裁の会見後に、ドル円レートが2円程シフトしていました。金融関係者の間でレートチェックがあったと噂になっていたようです。  夕方、公金を流用した資本による企業の社員が陽気に騒いでいたので、おそらく外国為替市場で通貨当局によるドル売り介入が実施されたのでしょう。  通貨当局の新しい担当者が、外為市場を経由して、また私的 ...

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書評:BLACK WAVE

2026/1/10

Black Wave - Saudi Arabia , Iran And The Rivalry That Unravelled the Middle East Kim Ghattas BLACK WAVE - Saudi Arabia, Iran And The Rivalry That Unravelled The Middle East  2020年の出版物ですが、未読であり、価格がリーズナブルだったので購入しました。  サウジアラビアとイランのライバル関係を軸にイラン革命以後の中東の国際関係のパズ ...

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do-Calculus: ベイジアン・ネットワークによるシナリオ分析

2026/1/25

 do-Calculusの概念を解説します。do-演算子(do-operator)と条件確率式で定義してあり、PearlのDAGを元にした因果推論の中心的な概念です。d-Calculusの三つのルールはd-separatorという概念を適用することで、ある確率分布が別の確率分布と等しいことを示すものです。直感的に把握するのは難しい概念であるかもしれません。DAGをイメージして把握した方が良いでしょう。  DAGで示した確率空間でノードの数が少なくなれば、同時確率分布、条件確率分布において計算が簡素化できま ...

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企業が不祥事を招くコンテクストとは 書評:The Dark Pattern

2025/9/28

The Dark Pattern: The Hidden Dynamics of Corporate Scandals Palazzo Ph.D, Guido; Hoffrage Ph.D, Ulrich The Dark Pattern: The Hidden Dynamics of Corporate Scandals.  本書は良い人が悪事を働くことについて記されています。ある環境の下では、彼らは嘘をつき、詐欺に関与します。彼らの振る舞いを理解するために、著者らは彼らの性格の欠点に焦点を当てるだけで ...

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投資ポートフォリオのストレス・テストーpgmpyベイジアン・ネットワークによるリスク評価

2025/8/6

地政学的リスク 原油価格とインフレーション  天然資源、特に原油価格を主要因に置いたインフレーションとポートフォリオを構成する各資産のストレス・テストのシナリオの一例を図示しています。ストレス・テストとして該当シナリオ1によるポートフォリオの損益を推定します。 図1 原油価格と地政学的リスクのシナリオ  中東の紛争による地政学的リスクの上昇、原油価格の変動は、必ずしも資産価格の下落に繋がりません。これは、資産価格に影響するまでに複数の経路があることが影響しています。  リスク・シナリオをDAG(Direc ...

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書評:Autocracy,Inc.

2025/6/16

Autocracy,Inc. The Dictators Who Want to Run the World. Anne Applebaum Autocracy,Inc. The Dictators Who Want to Run the World.  Autocracy,Inc.とは著者の造語です。本書のテーマをわかりやすく表現しています。  Incは通常、Incorporated として会社組織の法人名に使います。xxx Inc.と略し会社名の終わりにつけます。統合した独裁国家、あるいは一体化した専 ...

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ファイナンス 書評 経済・産業

書評:May Contain Lies -嘘を含んでいるかもしれない

May Contain Lies: How stories, statistics and studies exploit our biases - and what we can do about it.

Alex Edmans

嘘を含んでいるかもしれない:どのようにストーリー、統計、調査研究が私たちのバイアスにつけ込むか、私たちがそれについてできること。

嘘を含んでいるかもしれない

 著者は、私たちの日々の生活に影響する誤った情報が氾濫している複雑な現代社会において、より賢明に考え、正しい判断を行う上でのノウハウをわかりやすくまとめています。

 心理的なバイアスは人の判断に影響します。

 筆者は以下の短いエッセイで著書の言説を引用しましたが、著者は、”言説は事実ではない”という章を設けて引用自体も問題の一つとなりうることを示しています。

 なぜならそれは不正確かもしれない。引用は文脈の範囲外かもしれない。そのような引用はセンテンスの一部であるか、チャートからバーを切り出したものかもしれない。

 コンテキストから一部を切り出した場合、著者の本意とは異なる内容を示す場合もあります。著者は本書において、そうした錯誤を生じさせる原因をリストにあげて解説しています。

 著者は自らの体験から以下の二つのことを学びます。

  1. 私たちはほとんどどのような意見であっても、たとえそれに欠陥があって、後にその偽りが剥げることがあっても、その意見をサポートするレポートを書くことができます。時事問題への関心は多くの研究を惹きつけるため、あなたはそれらから選ぶことができます。その証明として、”研究結果は〜と示します。研究では…がわかっています。”のようなフレーズを安っぽく使います。
  2. 政府の報告のような私たちが信頼できると考えているソースは、まだ信頼できないかもしれません。政策立案者、コンサルタント、学者によるものあっても、どのような報告も人によって記述され、そして人間はバイアスを持つのです。

 著者は事例を通して、私たちが影響されているバイアスを明らかにします。多くの例は私たちがいかにリサーチから影響を受けているかを示します。私たちは、たとえ学術的な論文を読まないとしても、ブラウザで選択し、SNSで共有されている記事を開くことで、リサーチに関して読んでいます。専門家の意見を聞くときはいつでも、インフレーションがなぜそう高いのか、子供にどのように教えるか、私たちはリサーチに関して尋ねています。

 いくつかのケースで誤った情報は致命的になります。

 コロナパンデミックの時に、USAの大統領だったドナルド・トランプ氏は,hydroxychloroquineが治療になること、薬の歴史的なゲームチェンジャーになるとツィートしました。ある女性は、魚の水槽のクリーナーのラベルに’chrloroquine’の記載があるのに気づきました。彼女と夫は、ウィルスから保護されることを望み、それを飲みました。女性は危篤になった後、助かりましたが、夫は病院で亡くなりました。

 この例のソリューションはシンプルです。事実を確認すること。それを飲む前に薬品が安全なことを確認することは明白でしょう。

 知識を持つだけでは不十分で、それをいつ使うか、どのように使うか知る必要があります。バイアスは、私たちの知識を忘却させる原因になります。

 本書は三つのパートからなっています。バイアス、問題、そのソリューションです。

 まず判断を誤りに導くバイアスに関して解説し、問題のパートで推論の梯子という概念が導入されます。著者は、判断や推論における全体の問題に関して、六つの梯子を設けています。それは、

  • 証明
  • 証拠
  • データ
  • 事実
  • 言説(statement)

という階段を登っていくことです。梯子の各ステップに一つの章を割いて、そのステップで錯誤を導く問題を解説しています。最後のパートでこれらの問題に対するソリューションとして、より賢明に考えるための方策を提示しています。

 バイアスに関しては二つの心理的なバイアス、確証バイアスと白黒思考について記します。情報を誤解させる二つの大きな要因です。著者はいくつかの実証的な事例を挙げて、確証バイアスを明らかにしていきます。

 シリコンバレーバンクのケースを見てましょう。

 預かり金を2019年から2021年の間に3倍に増やした。彼らは余剰資金を、平時では安全資産であるUS T-Bondsにおいた。しかし、彼らの内部モデルでは、金利が上昇すれば、深刻な損失が発生することを予期していた。この警告に留意するより、エグゼクティブたちは、最小のリスクを予期するようにモデルの仮定を変更した。彼らはそれが、彼らの好みでないモデルだとわかると、それを破棄した。SVBは2023年に破綻した。

 著者は簡単な質問をすることでバイアスされた解釈を見つける方法を提示しています。

確証バイアス

  • 確証バイアスは、バイアスされた解釈を導きます。これは二つの状態(forms)から現れます。
    • 未熟な認識:事実確認なし、あるいは他の解説があるか尋ねることなしに、私たちが好むものを信じます。
    • 見方の狭い懐疑論:他の説明を考慮することなし、私たちが好まない要求を拒否します。
  • 確証バイアスを見つけるためには、この状態が真実であることを望んでいるか?と質問してください。
    • イエスであれば、未熟な認識に気を配り、対抗する理論があるか尋ねてください。
    • ノーであれば、盲目的な懐疑論に気を配り、真剣に承認してください。
  • 確証バイアスは私たちの中に組み込まれています。言説は、fight-or-fright 反応を誘発する脳の部位、アミダラ(amygdala)の応答に委ねないこと1
  • 双方の人々が、まだ相違する結論に導くために、同じデータに注目することができます。彼らは、見たいものを見ます。事実をテーブルの上に置くことは、対立意見に導くかもしれません。人々の見方は、対立が少なくなるどころか、さらにいっそう対立的になります。
  • 確証バイアスは、バイアスされた探索もまた導きます。私たちは、認めたくないソースに目を閉じます。そして見つけたいことを見つけます。仮説をサポートする最も良い方法は、それを否定することを試みること、矛盾することを試みることです。
  • 知識は私たちのバイアスをより気づかせるものではありません。代わりに、積極的な推論に従事させることによって、もっと影響を受けやすくさせます。バイアスされた探索によって、問題はより一層悪化します。

 確証バイアスは拡散しますが、私たちが直面する情報の全てのケースに適用されるものではありません。認知がなければ、確証バイアスはありません。そのため、クリアな頭でこれらの問題に取り組むことができます。

 確証バイアスともう一方のバイアス、白黒思考は、私たちが、そのトピックに事前の視点がない時ですら、常に何かをいいか悪いかで見なすことにあります。その思考を検出するためには、:その状態は全ての設定に適用可能と主張できるか尋ねてください。

 二つのバイアスが情報を解釈するとき、私たちは不注意な失敗の原因となることについて議論します。確証バイアスは、私たちに事前の視点があるときに適用し、白黒思考はそれがないときに現れます。これ等のバイアスは相互に補強します。

 2番目の"問題"の章で著者は二つのバイアスから発生する異なる問題を探ります。私たちは、事実のための言説、データのための事実、証拠のためのデータ、証明のための証拠について錯誤します。

 私たちが間違った推論の梯子を上らないことを確認するために、いくつかの簡単な質問を紹介し、Appendixに簡単なチェックリストとして、それ等がまとめてあります。

推論の梯子

 推論の梯子とは、言説( statement )、事実( Fact )、データ、証拠、証明、という階段を登っていくことでした。これらそれぞれの階段を登る際に錯誤を生じさせる原因を事例を交えて解説しています。各章の章末に各ステップにおける錯誤原因とそれを明らかにするための簡単な質問がまとめてあります。

 たとえば、事実からデータの階段を登る際の、バイアスから発生する錯誤の問題に関して、著者がまとめている結果を抜粋すると、

事実はデータではない

事実はデータではない。それは代表していないかもしれない。たとえストーリーやケーススタディ、逸話が本当でも例外事象かもしれないので、一般的な結論を導けない。

  • 間違った物語(narative fallacy)は、それが存在しないのに、因果関係がわかることを意味する。たとえ、同じ事実に他の説明が適合する時であっても、成功のためにストーリーのような理由を受け入れる。
    • 著者は二つのバイアスを利用してそのような最適なストーリーでも作り出すことができる。
    • 人々は、たとえ、それが幸運に基づくものであっても、彼らの成功を証明するための理由を考案する。
  • 以下のステップを要件として因果関係を理解すること
    • 仮説で始める:所与の入力が所与の出力に影響する。
    • それ等の出力と無関係の、入力のケースをテストサンプルの代表に収集する。
    • それ等の出力と無関係の、入力のないケースでコントロールサンプルの代表を収集する。
    • 両方のサンプルの出力の平均を計算し、相違を見つける。
    • 相違が統計的に特徴的かチェックする。相違が幸運に基づくものにならないように、規模とサンプルサイズは十分に大きくする。

ソリューション

 最後の章で問題に対するソリューションを記述しています。

 これらの問題に関するソリューションは、個人レベルから組織レベル、社会レベルへ三つに大別してよりよく考えるように取り組むことを提案しています。

  • 個人として賢明に考えること。
  • もっと賢明に考えるる組織を作ること
  • より賢明に考える社会を作ること

 この中で著者が提案する組織的な努力に関するソリューションのエッセンスを抜粋すると

より賢明に考える組織を作ること

  • より賢明な組織の構築は、順応しようとする集団思考に打ち勝つことを含みます。
  • 集団思考に打ち勝つことは、民主的な多様性だけでなく、それ等の知識の集まりに実際に段階を踏むこと。認識してスタッフを集めるチームづくりを含みます。
  • 形式的な手続きは以下のことを含みます。
    • 問題解決のためのブレーンストーミング:特別な一つに終点を当てる前に、すべての利用可能なオプションを実行する。
    • 問題発見のためにブルースカイ思考、予算または技術的な実現性によって拘束されない。
    • 静寂した開始、議題と論文は、会議の開始時にだけリリースされること。会議が開始すると、最初に年少から話すこと。
    • 重要な決定では、部屋の温度をとるよりむしろ匿名で決をとることなどです。

 Appendixにさらに賢明に考えるためのチェックリストが収録されています。

 このチェックリストは、不注意な失敗を避け、誤った推論を導かないために、簡単な質問を通して誤りを確認できるものなっています。

  1. Thinking fast and slowの反射的な思考です。ダニエル・カーネマン「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?」 ↩︎

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