非対称な従属性
非対称な従属性とは、市場、または金融商品の期待収益率がベルカーブと比較して、上位側と下位側で非対称となった外形の曲線を描きます。そしてそれが、別の市場や金融商品の期待収益率の確率分布と似通った形状を持っている場合を指します。
従属性があるとは、異なる市場間で、市場価格の変動が同様の振る舞いをするテイルリスクを持つことです。
テイルリスクは、よく知られた用語で表現されるブラックスワン現象のことです。
株式、債券、他の市場で取引される金融商品は同じような価格変動で振る舞います。
その価格変動の時系列データが表す期待収益(損失)率の確率分布は、中央から左側の裾野である下位側のテイルが通常の正規分布に比較して厚いテイルをfatter テイル、ファットテイル、あるいはヘヴィテイルである表現します。
ファットテイルな事象とは、通常は非常に稀に発生する大きな価格変動が通常の分布の想定より高い頻度で発生することを示します。
観測済みの時系列データの挙動であれば、ファットテイルを示す分布は下落局面が高い頻度で発生したことを示しています。
中央の平均値からの隔たりは、変動の大きさを示します。
ある二つの市場(あるいは金融商品)において従属性があるということは、ファットテイルな事象も同期的に発生することがあることを意味します。
極値理論でも見られますが、通常より大きな変動は、複数の市場で同期して発生していることがあります。
コピュラは二つの確率分布の境界の振る舞いを記述します。
この非対称な従属性のリスクは、下落局面で二つの市場が同じ振る舞いをし、極端な変動が同時に発生することになります。
この他の市場に影響するリスクは、一旦発生すると比較的大きなものになります。
この非対称な従属性をヘッジする手段なないでしょうか。
この非対称な従属性をヘッジする方法についてコピュラの視点からヘッジするソリューションを検討してみましょう。
従属性は以下のように、逆方向に価格が変動する対象をバスケットにすることで、片方の振る舞いを打ち消しあうポートフォリオを生成することができます。以下の方法が考えられます。
非対称な従属性が変化すると、例えば、市場に特徴的な高い負の事象が発生する際は、株式と特定のコモディティーの負の相関が非常に高くなります。
この金融商品の組み合わせたポートフォリオはダウンサイドの非対称な従属性(Lower-Tail Asymetric Dependency)に強いポートフォリオになります。
ポートフォリオ選択における相関の歪み効果
ある市場における期待収益率と他の市場における期待収益率の相関の値を元にポートフォリオを構成します。
線形相関が高い場合、相関リスクがあり、異なる市場を跨いで、ダウンサイドイベントが伝播して行きます。従属性の強い市場、商品に関してはポートフォリオが晒されるリスクエクスポージャーは、ポートフォリオを構成する資産の従属性に関係します。
ボラティリティーフォーキャスト
ボラティリティーベースのデリバティブの取引は、テイルリスクをヘッジする候補になります。古典的なデルタヘッジはインデックスに対するオプションの組み合わせになります。
線形相関リスクのヘッジ
逆方向に価格が変動する資産を組み合わせる、資産クラス間の関係を調べることで、こうした資産が見つかれば、テイルリスクに強いポートフォリオを作ることができます。
ボラティリティーと相関の両方を組み合わせたハイブリッドな方法もあります。
コピュラの視点では、これらをヘッジすることができますが、コストとパフォーマンスのトレードオフは存在します。パフォーマンスを追求すれば、リスク許容度は低下しますが、パフォーマンスを抑えてもリスクヘッジを徹底したいケースの方が多いでしょう。こうした手法はいくつかありますが、取引コストを考慮して決めることになります。
市場間に従属性があれば、テイルイベント(極端な事象)は伝搬していきます。従属性は脆弱性になりますが、従属性が低い資産を選択して組んだポートフォリオは頑丈なポートフォリオということになります。これは分散、共分散アプローチにもつながりますが、コピュラでは線形相関以外の対象に適用できるという長所があります。
コピュラベースのポートフォリオで高いパフォーマンスの例は見かけませんが、バックテストでもリスクには頑丈です。コピュラを用いてヘッジする手法について追求してみても良いでしょう。ただし、リスク尺度と資産配分について、一般的な期待ショートフォールに関しても通じることですが、稀で極端な事象のために、資産配分が当初の意図とは全く外れたものになることがあります。
直近でそうした事象に遭遇した西海岸の企業の資産配分はどうだったでしょうか。期待ショートフォールは、そもそも期待物価上昇率を反映するものではありません。形式的な基準だけでは、極端な事象においては適用できないケースが現実に存在します。
どのようなヘッジでも特定のリスク尺度と資産配分を決定する前に、注意深く熟考しなければなりません。