ブラックアースについてどのように解釈されるでしょうか。
黒い地球?
肥沃な大地
東欧の肥沃な大地、広大な穀倉地帯のことを指しています。
この地帯は小麦の栽培が盛んで、巨大な耕作機械で広大な農地から小麦を収穫し、欧州一帯や中東、アフリカ諸国へ輸出を行っています。
前世紀の欧州での二つの大戦の間でこの穀倉地帯一体は、二つの象徴的な全体主義社会の影響下に入ります。
ポーランドは西の独裁国家と東の全体主義国家に分割統治され、肥沃な大地の中心にある国もその影響下に入ります。
カチン(Katyn)の森での件など、東欧の政治社会状況、近現代史は鉄のカーテンの向こう側に閉ざされ、戦後西側で暮らす私たちには知るよしもないことでした。
フランシス・フクヤマ氏が「歴史の終わり」を著したように、鉄のカーテンが降ろされると、東側諸国は市場経済に参入し、当時の記録も公開され私たちが参照できるようになりました。
西側の独裁者同様、東側の独裁者の統治も知られるようになります。
一つ目の大戦後、肥沃な大地の中心は西側の独裁者の生存圏(植民地)(Lebensraum-注)の対象となリます。
注
Lebensraum (独語) 当時の指導者の考えを形成する概念の一つの固有の用語であり、仏語のbiotope, 英語のhabitat. 生物が生きていく上で必要な領域。同時代の日本では大東亜共栄圏と呼ばれた概念に近い。
当時の農業は現代ほど技術革新が進んでいないため、食料生産物の収穫高は耕作地の大きさに制限されていました。
当時の農業技術の収穫量で人々の食糧を賄うために肥沃な大地が羨望(支配を渇望する)の対象だったのです。
独裁者による全体主義国家は東に侵攻します。
東側でも一大変革が起こり、指導層が変わり別な独裁者が誕生することになります。
二つの全体主義国家が肥沃な大地を挟んで対峙することになります。
その時起きた出来事はスラブ語系を使いこなして資料を参照できる東欧の歴史家の著作に記されてあります。
肥沃な大地はオレンジ革命やマイダン革命、EUとの間で政治体制が揺れていました。
クリミアで問題が発生し、2022年2月に特殊な車両が国境を超えた後、パイプラインを使った西ヨーロッパへのガスの供給は問題を抱え、オデッサから小麦の出荷は止まりました。
これによって生じた供給サイドの不足状況は、エネルギーと穀物を契機に関連物資の需要超過と供給不足へと拡大していきます。
エネルギーと穀物の市場にできたホールが他の代替品の需要に伝播し、物不足が波及していきます。
供給サイドに起因したインフレーションの発生です。
同時にドルの需要が上昇し続けます。以下の図は2022年2月末日を基準にした各国の対ドル為替レートです。
オーストラリア、カナダドル、スイスフラン、ユーロ、スターリングの対ドルレートの%変化を図示しています。下の図は同じ日付を基準値にしたドル円レートです。
EUの対応は早く、エネルギー供給元のデカップリングを進めます。
シェールのガトリングのリースはフル稼働、カタール政府は大口の長期契約を次々に結んでいきます。
一時的にガス、オイル価格は上昇しましたが、現在はすでに落ち着き、一時9ドルを超えた天然ガスのスポット価格は2023年4月現在は2ドル前後です。
オイル価格は、一時的に1バレル120ドルを超えましたが、急上昇後の極端な下落はありません。
1バレル当たり一定価格を下回る水準では、OPECプラスが調整に入っています。
一方で、長期間にわたる日本のデフレーションはこの外因により止まったようです。
代替需要の伝播
ガスー>アンモニア不足→肥料不足→野菜不足
このように、サプライチェインの一つのピースが欠けることで、代替需要の皺寄せが様々な商品に伝播して、物価が上昇していきます。
この代替需要の皺寄せの伝播が世界規模で発生しました。
SARS-COV-2によるロックダウンの労働市場や生産部門への影響も重なり、総供給の不足がインフレーションを発生させます。
各国の中央銀行がこの一時的なインフレーションに対処します。
コロナパンデミック後の振り子
世界中で、突如発生したインフレーションに対応する金利の調整が実施されます。
物価が上昇する前、2022年初頭までは、コロナパンデミック下のリモートワーク需要の関係で、この間のIT企業やEコマース関連企業の業績は上向きキャッシュフローが好転していました。
顧客基盤をシリコンバレーの新興企業などを中心とした、シリコンバレーバンク(以下 SVB)の預金残高はそれ以前の3倍に急増しています。
この潤沢な資金の運用先として安全資産である長期債が選択されたようです。
一時的な資金管理として米国債に振り向けた可能性はありますが、アロケーションが債券に隔たることになりました。
SVBはストレステストの対象外だったようです。
ここ30年ほど、インフレとは縁がなかった世界は、FEDや他の中央銀行が急速な物価上昇に対処する様子を見ることなりました。
急速な金利の上昇は、債券価格に影響し、その流動性は低下していきます。
そして、SVBは業務を停止することになります。