因果深層学習 meta-Learner, TARNet, CFRNet, DragonNet

2026/3/21

 因果推論において、処置の個別の効果を把握するのに、ITE(Indivisual Treatment Effect)あるいは、CATE(Conditional Average Treatment Effect)を計算します。伝統的な機械学習の方法を使って因果の効果を計算する場合は、対象となるデータに適合する機械学習モデル、たとえば、ツリーをもとにした方法やニューラルネットワークを使います。本稿ではNeyman-RubinのPOフレームワークを使って、バイナリの処置効果の推定のために、meta-learne ...

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MMT信仰が招く"アリとキリギリス"の結末

2026/3/9

「潜在成長率に合わせて通貨を発行し、増えた分が政府支出となる」これは、MMTと日本でリフレ派と呼ばれる人々の主張を端的に示したものです。  MMTの理論的な背景は、貨幣を国家の創造物と捉えるくらいで、その他は主流派の経済学と大差ありません。彼らは”政府債務の拡大が自国通貨建てであるかぎり、信用リスクや通貨の信任の問題は発生せず”、”財政赤字を全く気にする必要はない”と主張します。 政府支出の制限 ー アリとキリギリス  MMTは単一の理論ではなく、貨幣に関するいくつかの考え方の集まったものです。日本で話題 ...

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外為市場介入クレプトピア3:公金の行方

2026/2/18

 現在も日本の担当者がドル円為替レートの推移に関して介入を示唆する発言をすることがあります。  もし、実際には2026年1月23日に外国為替市場へ単独介入が実施されていた場合、どういうことが起きているかを明らかにしておきます。  what if ~ のCounterfactual推論と捉えてください。 外国為替市場ドル売り介入  外国為替市場への介入については、実際の処理はよく知られていません。図1を例に、どのように処理されているか見ていきましょう。 図1 ドル売り介入の場合  外国為替市場介入は、以下の ...

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外為市場介入クレプトピア2:繁栄への月並みの経路

2026/2/5

1月23日のドル円為替市場  かつてある公的機関から事実とは異なる内容が、連日発表されていました。現在から、80年以上前のことです。  現在、2026年1月30日の発表によると、先月2025年12月29日から2026年1月28日までの外為市場介入はなかったことになっています。  1月23日の日銀総裁会見後のドル円為替レートの推移には、大きな建て玉の裁定取引の履歴が記録されています。ドル売りの投入資金は反対売買で全額決済されています。  数日前、1月20日に米国で長期金利が上昇しています。まとまった量の米国 ...

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外為市場介入クレプトピア:美しい国、日本

2026/1/26

 クレプトピアは クレプトクラシー(Kleptocracy)とユートピア(Utopia)を組み合わせた造語です。Kleptocracyは権力者が国の富を奪うことを指します。  1月23日、日銀総裁の会見後に、ドル円レートが2円程シフトしていました。金融関係者の間でレートチェックがあったと噂になっていたようです。  夕方、公金を流用した資本による企業の社員が陽気に騒いでいたので、おそらく外国為替市場で通貨当局によるドル売り介入が実施されたのでしょう。  通貨当局の新しい担当者が、外為市場を経由して、また私的 ...

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書評:BLACK WAVE

2026/1/10

Black Wave - Saudi Arabia , Iran And The Rivalry That Unravelled the Middle East Kim Ghattas BLACK WAVE - Saudi Arabia, Iran And The Rivalry That Unravelled The Middle East  2020年の出版物ですが、未読であり、価格がリーズナブルだったので購入しました。  サウジアラビアとイランのライバル関係を軸にイラン革命以後の中東の国際関係のパズ ...

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do-Calculus: ベイジアン・ネットワークによるシナリオ分析

2026/1/25

 do-Calculusの概念を解説します。do-演算子(do-operator)と条件確率式で定義してあり、PearlのDAGを元にした因果推論の中心的な概念です。d-Calculusの三つのルールはd-separatorという概念を適用することで、ある確率分布が別の確率分布と等しいことを示すものです。直感的に把握するのは難しい概念であるかもしれません。DAGをイメージして把握した方が良いでしょう。  DAGで示した確率空間でノードの数が少なくなれば、同時確率分布、条件確率分布において計算が簡素化できま ...

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企業が不祥事を招くコンテクストとは 書評:The Dark Pattern

2025/9/28

The Dark Pattern: The Hidden Dynamics of Corporate Scandals Palazzo Ph.D, Guido; Hoffrage Ph.D, Ulrich The Dark Pattern: The Hidden Dynamics of Corporate Scandals.  本書は良い人が悪事を働くことについて記されています。ある環境の下では、彼らは嘘をつき、詐欺に関与します。彼らの振る舞いを理解するために、著者らは彼らの性格の欠点に焦点を当てるだけで ...

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投資ポートフォリオのストレス・テストーpgmpyベイジアン・ネットワークによるリスク評価

2025/8/6

地政学的リスク 原油価格とインフレーション  天然資源、特に原油価格を主要因に置いたインフレーションとポートフォリオを構成する各資産のストレス・テストのシナリオの一例を図示しています。ストレス・テストとして該当シナリオ1によるポートフォリオの損益を推定します。 図1 原油価格と地政学的リスクのシナリオ  中東の紛争による地政学的リスクの上昇、原油価格の変動は、必ずしも資産価格の下落に繋がりません。これは、資産価格に影響するまでに複数の経路があることが影響しています。  リスク・シナリオをDAG(Direc ...

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書評:Autocracy,Inc.

2025/6/16

Autocracy,Inc. The Dictators Who Want to Run the World. Anne Applebaum Autocracy,Inc. The Dictators Who Want to Run the World.  Autocracy,Inc.とは著者の造語です。本書のテーマをわかりやすく表現しています。  Incは通常、Incorporated として会社組織の法人名に使います。xxx Inc.と略し会社名の終わりにつけます。統合した独裁国家、あるいは一体化した専 ...

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ファイナンス 国際関係 書評

書評:Our dollar, Your problem

Our dollar, Your Problem: An Insider's view of seven turbulent decades of global finance, and the road ahead

Kenneth Rogoff

Our dollar, Your Problem: An Insider's view of seven turbulent decades of global finance, and the road ahead

 最近、経済制裁をテーマにした著書にいくつか目を通しました。USドルは世界経済秩序を形作るのに組み込まれており、多国間の決済システムで標準の通貨という位置にあります。

 近年の地政学的な問題に対して、兵器を使った制裁でなく、USドルの信用とグローバル経済のシステムを用いた経済制裁が武器として用いられています。それはUSドルの影響力を使ったものです。

 本書は、USドルのヘゲモニーについて27章を設けて、各章ごとに個別の国やトピックを取り上げて、金融・経済におけるUSドルの影響と関係性を解説しています。

 ロシアやイランに関しては軍事力の行使でなく、世界経済システムの中のUSドルの力を行使することで、経済制裁を実施しています。

 本書のタイトル”Our dollar, Your problem” は、ニクソン政権時代に財務長官”John Connally”氏が発した言葉からとってあります。1リチャード・ニクソン氏が金・ドル交換停止を決定し、ブレトンウッズ体制が終了した時です。国際通貨システムは変動相場制に移行します。

 このニクソン・ショック後のインフレーションにより欧州のドル準備が問題になりました。

 最終章にあるように、Pax dollar の時代の終焉は、世界経済にインパクトを及ぼす出来事が発生するたびに警鐘されることです。以下の著書でも論じていますが、USドルとって変わるシステムや通貨は出てきそうにありません。

 現代の経済システムと貿易の仕組みは、USドルを元に形成されています。

 兵器を用いない経済制裁が有効なのは、この経済システムの仕組みのためです。本書では、一つのトピックとしてUSドルと国際関係、経済、今後の国際決済システムやデジタル通貨について評しています。

 ニクソン・ショック以後、USドルと米経済の対抗軸としてのソビエト連邦、日本、欧州共通通貨、そして中国、と各国の通貨と経済の関係を論じ、デジタル通貨や将来の通貨制度の関して展望しています。

 ソビエト連邦は軍事的には、米国の挑戦者でしたが、経済的にそうなることはありませんでした。1970年代後半から1990年代初頭、日本は金融と貿易に関して、競争相手となり洗練された金融システムと良い機構を保持し、国際競争力が高くなっていました。

 日本はプラザ合意以後、円の切り上げから債権国として大きな存在となり、バブルが発生して弾けたのはよく知られています。東京の地価は、東京の皇居の区画がカリフォルニア全体の地価より価値があるという、比較が滑稽な程、地価が高騰していました。
 バブル後の処理で長期間経過したのも周知のとおりです。

 覇権を競う中国については、貿易のパートナーでありながら、政治的には経済制裁の対象になっているイラン、ロシア、北朝鮮などとの外交関係が経済協力、貿易のパートナーともなっており、外交的には多極化の様相を示しています。

 BRICSを中心とした国際決済システムの構想はありますが、国際決済通貨としてはUSドルがその信用度から揺らぐことはなさそうです。

 中国の建設セクターは急速に利益を縮小させていきます。中国の建設ブームについては、"乗客のいない高速鉄道"や"住人のいない家屋"で形容されます。

 2021年の夏に建設、不動産会社のEvergrandeが破綻し、"this time is different"効果の例を見ることになります。

 中国の成長の問題は、投資に対する利益の減少のためです。中国住宅需要が最盛期を越えたのでなく、中国の最盛期についての議論になります。中国の不動産とインフラの行き過ぎた建設ははっきりしています。

 USドルは国際取引の決済通貨として実質的な標準通貨です。USドルと共に生きていくことには、自国通貨の交換比率として固定レートへの誘惑があります。中国の中央銀行はインフレーションに注目するより人民元の交換レートに注目しています。人民元とドルの交換レートに関して、中国は特定のレンジでのターゲットゾーンをとっていますが、むしろ固定レートに近いものです。

 固定レートは金融政策に透明性があり、人々にはわかりやすいシステムです。一方で、それは驚くほど脆弱であることがわかっています。破綻した場合、大混乱を起こす傾向があります。銀行は破綻し、国は破綻し、政権は倒れ、経済成長は止まります。持続不可能な固定レートの体制によって弾けた、1998年のロシア金融危機を考えてみてください。この時、合衆国ではLTCMの破綻を呼びましたが、ロシアでは、著者によると、ウラジミール・プーチン氏を権力に送るロケット燃料でした。

 他の特筆すべき固定レートに準じた危機は1994年のメキシコ、ペソ危機、1997-1998年のアジア通貨危機、1999年のブラジル危機、2010-2012年の債務国がユーロ圏の離脱の脅威に晒された欧州債務危機が含まれます。

 対ドルでの厳密な固定レートを持つことの問題は、国の金融政策に強い制限をかけることにあります。金利の動きをFedに同期させる必要があるのです。ロバート・マンデル氏はこの問題をトリレンマ、"不可能な三位一体"と説明しています。

 国家は、固定レートと開かれた金融市場、独立した政策金利を同時に実現することはできないのです。

 Pax dollarの時代は終焉しそうにありません。それに取って代わりうるシステムが見当たらないのです。このテーマでは、デジタル通貨を用いたBricsを中心とした決済通貨システムの構想に注目している識者もいます。

 しかし、検討されている国際決済システムを現行の仕組みと比較した場合、専横的な政治システムが背景にあれば、それは虚偽と搾取を含み、最新の技術を応用してデジタル通貨を導入しても脆弱のものになるでしょう。

 合衆国では国の債務の持続性が議論にあがります。現在のところ最終的にUSドルの信用を基盤にしたシステムが継続していくことでしょう。ただし、繰り返し多くの事例でみてきたように、"This time is different"を無視するのは愚かなことだと著書は主張しています。

  1. "The price of time"を読み返していたところ、("The Price of Time: The Real Story of Interest Rate",Edward Chancellor)の17章The Mother and Father of All Evilの冒頭に本書のタイトルの由来となったJohn Connally氏の言葉が引用されていました。"The dollar is our currency but your problem." US Treasury Secretary John Connally, 1971 ↩︎

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