MMT信仰が招く"アリとキリギリス"の結末

2026/3/9

「潜在成長率に合わせて通貨を発行し、増えた分が政府支出となる」これは、MMTと日本でリフレ派と呼ばれる人々の主張を端的に示したものです。  MMTの理論的な背景は、貨幣を国家の創造物と捉えるくらいで、その他は主流派の経済学と大差ありません。彼らは”政府債務の拡大が自国通貨建てであるかぎり、信用リスクや通貨の信任の問題は発生せず”、”財政赤字を全く気にする必要はない”と主張します。 政府支出の制限 ー アリとキリギリス  MMTは単一の理論ではなく、貨幣に関するいくつかの考え方の集まったものです。日本で話題 ...

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外為市場介入クレプトピア3:公金の行方

2026/2/18

 現在も日本の担当者がドル円為替レートの推移に関して介入を示唆する発言をすることがあります。  もし、実際には2026年1月23日に外国為替市場へ単独介入が実施されていた場合、どういうことが起きているかを明らかにしておきます。  what if ~ のCounterfactual推論と捉えてください。 外国為替市場ドル売り介入  外国為替市場への介入については、実際の処理はよく知られていません。図1を例に、どのように処理されているか見ていきましょう。 図1 ドル売り介入の場合  外国為替市場介入は、以下の ...

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外為市場介入クレプトピア2:繁栄への月並みの経路

2026/2/5

1月23日のドル円為替市場  かつてある公的機関から事実とは異なる内容が、連日発表されていました。現在から、80年以上前のことです。  現在、2026年1月30日の発表によると、先月2025年12月29日から2026年1月28日までの外為市場介入はなかったことになっています。  1月23日の日銀総裁会見後のドル円為替レートの推移には、大きな建て玉の裁定取引の履歴が記録されています。ドル売りの投入資金は反対売買で全額決済されています。  数日前、1月20日に米国で長期金利が上昇しています。まとまった量の米国 ...

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外為市場介入クレプトピア:美しい国、日本

2026/1/26

 クレプトピアは クレプトクラシー(Kleptocracy)とユートピア(Utopia)を組み合わせた造語です。Kleptocracyは権力者が国の富を奪うことを指します。  1月23日、日銀総裁の会見後に、ドル円レートが2円程シフトしていました。金融関係者の間でレートチェックがあったと噂になっていたようです。  夕方、公金を流用した資本による企業の社員が陽気に騒いでいたので、おそらく外国為替市場で通貨当局によるドル売り介入が実施されたのでしょう。  通貨当局の新しい担当者が、外為市場を経由して、また私的 ...

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書評:BLACK WAVE

2026/1/10

Black Wave - Saudi Arabia , Iran And The Rivalry That Unravelled the Middle East Kim Ghattas BLACK WAVE - Saudi Arabia, Iran And The Rivalry That Unravelled The Middle East  2020年の出版物ですが、未読であり、価格がリーズナブルだったので購入しました。  サウジアラビアとイランのライバル関係を軸にイラン革命以後の中東の国際関係のパズ ...

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do-Calculus: ベイジアン・ネットワークによるシナリオ分析

2026/1/25

 do-Calculusの概念を解説します。do-演算子(do-operator)と条件確率式で定義してあり、PearlのDAGを元にした因果推論の中心的な概念です。d-Calculusの三つのルールはd-separatorという概念を適用することで、ある確率分布が別の確率分布と等しいことを示すものです。直感的に把握するのは難しい概念であるかもしれません。DAGをイメージして把握した方が良いでしょう。  DAGで示した確率空間でノードの数が少なくなれば、同時確率分布、条件確率分布において計算が簡素化できま ...

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企業が不祥事を招くコンテクストとは 書評:The Dark Pattern

2025/9/28

The Dark Pattern: The Hidden Dynamics of Corporate Scandals Palazzo Ph.D, Guido; Hoffrage Ph.D, Ulrich The Dark Pattern: The Hidden Dynamics of Corporate Scandals.  本書は良い人が悪事を働くことについて記されています。ある環境の下では、彼らは嘘をつき、詐欺に関与します。彼らの振る舞いを理解するために、著者らは彼らの性格の欠点に焦点を当てるだけで ...

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投資ポートフォリオのストレス・テストーpgmpyベイジアン・ネットワークによるリスク評価

2025/8/6

地政学的リスク 原油価格とインフレーション  天然資源、特に原油価格を主要因に置いたインフレーションとポートフォリオを構成する各資産のストレス・テストのシナリオの一例を図示しています。ストレス・テストとして該当シナリオ1によるポートフォリオの損益を推定します。 図1 原油価格と地政学的リスクのシナリオ  中東の紛争による地政学的リスクの上昇、原油価格の変動は、必ずしも資産価格の下落に繋がりません。これは、資産価格に影響するまでに複数の経路があることが影響しています。  リスク・シナリオをDAG(Direc ...

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書評:Autocracy,Inc.

2025/6/16

Autocracy,Inc. The Dictators Who Want to Run the World. Anne Applebaum Autocracy,Inc. The Dictators Who Want to Run the World.  Autocracy,Inc.とは著者の造語です。本書のテーマをわかりやすく表現しています。  Incは通常、Incorporated として会社組織の法人名に使います。xxx Inc.と略し会社名の終わりにつけます。統合した独裁国家、あるいは一体化した専 ...

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書評:Our dollar, Your problem

2025/12/23

Our dollar, Your Problem: An Insider's view of seven turbulent decades of global finance, and the road ahead Kenneth Rogoff Our dollar, Your Problem: An Insider's view of seven turbulent decades of global finance, and the road ahead  最近、経済制裁をテーマにした著書にいくつか ...

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書評 経済・産業

書評:Eighteen Days in October: The Yom Kippur War and How It Created the Modern Middle East

Eighteen Days in October: The Yom Kippur War and How It Created Modern Middle East

Uri Kaufman

2023年11月現在

 中東での紛争の拡大懸念が緩和したことで原油価格が$80を切リました。前回もそうでしたが、原油価格が$80を切るとOPEC+が減産を決定するようになりました。

 中東産油国が最初にエンバーゴを始めたのが第4次中東戦争の時でした。当時はOAPECでしたが、これを契機に石油の価格支配力はメジャーからOPECに移っていくことになります。

 このOPECが石油の禁輸を実施した第一次オイルショックから50年が経過しました。第4次中東戦争は、ユダヤ教の贖罪日に起きたためヨム・キブール戦争とも呼ばれます。1973年10月6日のことです。

 現代の、2023年10月7日のハマスによる奇襲は、それから50年後のこのヨム・キブール期間、再びユダヤ教徒にとって宗教的な祭日に発生しています。

 原油価格の動向および中東問題を把握する上で、ヨム・キブール戦争に関して不足している知識を補うために、この著作を読んでおくことにしました。

 この著書は2023年9月に出版された歴史書です。

11月末日

 この著書を読んでいるときに、ヘンリー・キッシンジャー氏が100歳で没したことが報じられました。彼は、本書で展開されている戦争時に、USAの国務長官だった人物です。

 彼がニクソン政権とフォード政権で国務長官を務めた時、対中国との国交を樹立し、ベトナム戦争を終結させ、ブレトンウッヅ体制は終焉し、ニクソン政権下で国際金融システムは変動相場制に移行します。

 著作Eighteen Days in Octoberのテーマになっている中東外交とアラブ諸国のエンバーゴによる第一次オイルショックは彼がUSA側でハンドリングしていました。これは中東での米ソ冷戦下の大きな出来事の一つです。東アジア、南米、中東での彼の足跡を辿ると、この時代の地球全体を俯瞰して把握することになるでしょう。

 前日の11/28にバークシャのチャーリー・マンガー氏が白寿で亡くなられました。別の機会に同世代の彼らの思想、信条を振り返ってみます。

ヘンリーキッシンジャー

TBD

チャーリー・マンガー

TBD

Eighteen Days in October: The Yom Kippur War and How It Created the Modern Middle East

 1967年6月9日、第三次中東戦争後に、エジプトのナセルは言っています。どれほど時間がかかろうとも、帝国主義が一掃され、イスラエルが一国になった時、レベンジの日が来るだろう。

 開戦前、シリアは、エジプトなし戦争を実施するつもりはなく、エジプトでは、イスラエル空軍が無力化されるまで戦争には向かわないと考えていたようです。1973年8月21日シリア軍の関係者はエジプトのカウンターパートに会うためにアレクサンドリアに向かいます。

 そして10月の18日間の出来事がそれぞれの当事者達の行動を通して、その期間に事態がどのように進行していったか、その時、そこで何が起きていたかが記されています。シリア、エジプト、イラク、イスラエル、ヨルダン、米、ソビエトの各関係者の発言が引用されています。

 当時はアラブ側をソビエトが支援していたため、米ソの対立も一つの背景として存在しています。この時期、米中国交樹立の後、ベトナム戦争は停戦されてます。その後、中東でこの問題が勃発します。

 その日、事前に計画を掴んでいたイスラエルは、アラブが攻撃してきた際、反撃する計画を立てていました。

 しかしながら、空軍はシリアのSAM(スカッドミサイル:ソビエト製の地対空ミサイル)によって想定外の大きな被害を受けます。最初の72時間で49機の航空機と500台の戦車を失くすという、初戦の戦況から核の使用が検討されます。

 読者はその場に居合わせているかのような臨場感で、事態の推移を追い、何が起きていたかがわかります。

 戦況は日々変わりますが、USAの国務長官もイスラエルへの支援とともに、関係各国へのシャトル外交を続け、エジプトを交渉により停戦させ、後のキャンプデービッド合意に結びつけます。

 一方、イスラエルを支援するUSAとオランダに対し、OAPECを形成するアラブの産油国6カ国は、石油のエンバーゴを開始します。

 著者は多くの関係者への取材により、当事者の考え、発言を通してこの時の一連の出来事を各当事者の視点で記しています。当時の事態の推移を把握できる良い資料です。

 この18日間で、現在のエネルギー需給に関わる資源のパワーバランスが大きく変わることになりました。

 50年後の節目に起きた出来事で、改めて当時、発生した出来事の重要性が認識されます。

同時代の日本

 日本では、列島改造論で圧倒的な支持を受けていた田中内閣は、オイルショックとそれに伴う物価上昇に不満を持つ国民の煽りを受け原発推進に舵を切ることになります。東日本大震災で事故を起こした福島の原発建設もこの頃計画されていきます。

 現在から振り返ると、この政策転換もショックドクトリン(注)の一つとみなせるでしょう。

(注)

The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism. 

Naomi Klein

-書評, 経済・産業
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