外為市場介入クレプトピア:美しい国、日本

2026/1/26

 クレプトピアは クレプトクラシー(Kleptocracy)とユートピア(Utopia)を組み合わせた造語です。Kleptocracyは権力者が国の富を奪うことを指します。  1月23日、日銀総裁の会見後に、ドル円レートが2円程シフトしていました。金融関係者の間でレートチェックがあったと噂になっていたようです。  夕方、公金を流用した資本による企業の社員が陽気に騒いでいたので、おそらく外国為替市場で通貨当局によるドル売り介入が実施されたのでしょう。  通貨当局の新しい担当者が、外為市場を経由して、また私的 ...

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書評:BLACK WAVE

2026/1/10

Black Wave - Saudi Arabia , Iran And The Rivalry That Unravelled the Middle East Kim Ghattas BLACK WAVE - Saudi Arabia, Iran And The Rivalry That Unravelled The Middle East  2020年の出版物ですが、未読であり、価格がリーズナブルだったので購入しました。  サウジアラビアとイランのライバル関係を軸にイラン革命以後の中東の国際関係のパズ ...

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do-Calculus: ベイジアン・ネットワークによるシナリオ分析

2026/1/25

 do-Calculusの概念を解説します。do-演算子(do-operator)と条件確率式で定義してあり、PearlのDAGを元にした因果推論の中心的な概念です。d-Calculusの三つのルールはd-separatorという概念を適用することで、ある確率分布が別の確率分布と等しいことを示すものです。直感的に把握するのは難しい概念であるかもしれません。DAGをイメージして把握した方が良いでしょう。  DAGで示した確率空間でノードの数が少なくなれば、同時確率分布、条件確率分布において計算が簡素化できま ...

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企業が不祥事を招くコンテクストとは 書評:The Dark Pattern

2025/9/28

The Dark Pattern: The Hidden Dynamics of Corporate Scandals Palazzo Ph.D, Guido; Hoffrage Ph.D, Ulrich The Dark Pattern: The Hidden Dynamics of Corporate Scandals.  本書は良い人が悪事を働くことについて記されています。ある環境の下では、彼らは嘘をつき、詐欺に関与します。彼らの振る舞いを理解するために、著者らは彼らの性格の欠点に焦点を当てるだけで ...

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投資ポートフォリオのストレス・テストーpgmpyベイジアン・ネットワークによるリスク評価

2025/8/6

地政学的リスク 原油価格とインフレーション  天然資源、特に原油価格を主要因に置いたインフレーションとポートフォリオを構成する各資産のストレス・テストのシナリオの一例を図示しています。ストレス・テストとして該当シナリオ1によるポートフォリオの損益を推定します。 図1 原油価格と地政学的リスクのシナリオ  中東の紛争による地政学的リスクの上昇、原油価格の変動は、必ずしも資産価格の下落に繋がりません。これは、資産価格に影響するまでに複数の経路があることが影響しています。  リスク・シナリオをDAG(Direc ...

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書評:Autocracy,Inc.

2025/6/16

Autocracy,Inc. The Dictators Who Want to Run the World. Anne Applebaum Autocracy,Inc. The Dictators Who Want to Run the World.  Autocracy,Inc.とは著者の造語です。本書のテーマをわかりやすく表現しています。  Incは通常、Incorporated として会社組織の法人名に使います。xxx Inc.と略し会社名の終わりにつけます。統合した独裁国家、あるいは一体化した専 ...

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書評:Our dollar, Your problem

2025/12/23

Our dollar, Your Problem: An Insider's view of seven turbulent decades of global finance, and the road ahead Kenneth Rogoff Our dollar, Your Problem: An Insider's view of seven turbulent decades of global finance, and the road ahead  最近、経済制裁をテーマにした著書にいくつか ...

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書評:Chokepoints: American power in the age of economic warfare

2025/6/3

Chokepoints: American power in the age of economic warfare Fishman, Edward 経済制裁は軍事的な脅威に対して兵器を用いず、経済的な影響力を行使することで、該当国を制止することを意図しています。本書に取り上げている5つの出来事を通して、為政者の意思決定の相互作用で作られる現代史と、経済面でのUSドルの影響力を把握することになるでしょう。 Chokepoints: American power in the age of economic ...

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書評:Shocks, Crises, and False Alarms: How to Assess True Macroeconomic Risk

2025/4/20

Shocks, Crises, and False Alarms: How to Assess True Macroeconomic Risk Philipp Carlsson-Szlezak, Paul Swartz Shocks, Crises, and False Alarms: How to Assess True Macroeconomic Risk  本書はマクロ経済における近年見られたような、ショック、危機などのリスクを案内します。  マクロ経済のリスクを判断するとき、リスクが実際のショック ...

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合衆国の新関税の税率と貿易収支

2026/2/3

2025年4月2日に合衆国の新しい関税の税率が公表されました。現在の貿易収支の状況と導入される関税の税率をまとめます。 合衆国の貿易収支 図1 合衆国の貿易収支2023年(単位:USD million)  図1は、左側が輸出国、右側が輸入国です。マウスポインタを領域の上に置くと、輸出入額(単位:100万USドル)を表示します。 データソースはJETROがまとめている貿易投資年報より参照。 新関税の税率と各国の対米貿易収支 図2 関税率と対米貿易収支 対米貿易収支は、輸出額から輸入額を減算した値(単位:10 ...

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書評 経済・産業

企業が不祥事を招くコンテクストとは 書評:The Dark Pattern

The Dark Pattern: The Hidden Dynamics of Corporate Scandals

Palazzo Ph.D, Guido; Hoffrage Ph.D, Ulrich

The Dark Pattern: The Hidden Dynamics of Corporate Scandals.

 本書は良い人が悪事を働くことについて記されています。ある環境の下では、彼らは嘘をつき、詐欺に関与します。彼らの振る舞いを理解するために、著者らは彼らの性格の欠点に焦点を当てるだけでなく、その意思決定を行なったコンテクストを調査しています。そのコンテクストの下では、彼らは、現実の認知において、その意思決定の倫理的、法的な次元はもはや見えません。彼らは、"倫理的に盲目(Ethical blindness)"となります。

 職務倫理規定の逸脱から不祥事や大惨事に向かう様は、日本では、JCOの臨界事故をケーススタディとした岡本氏による著書「無責任の構造」で解説した状況を想起させます。本書の著書らは、”コンテクスト”の概念を導入しています。これは、置かれた状況のすべての要因を指し、「無責任の構造」と同じ概念と捉えて良いでしょう。

 本書の”コンテクスト"は、彼らの振る舞いを駆動する重要な役割も持っており、”コンテクスト"は理性よりも強力に、価値や道徳よりも強力に、そして最良の決意よりも強力になりうるものとして、本書の中心となる概念の一つになっています。こうした非倫理的な振る舞いとして、アーレントが洞察した”悪の凡庸さ(banality of eval)”「エルサレムのアイヒマン」やジンバルトの「ルシファー・エフェクト」も例に挙げ、これらのコンテクストの強力さを示しています。

 これはFestingerの指す認知的不協和を起こすような状況です。信じていることと観察される事実の間で不協和を起こすため、内部で葛藤を生じさせます。人はこの葛藤を処理するために、道徳を取り除く場合が生じるのです。

 T.スナイダー氏は、「On Tyranny(邦訳:暴政)」の中で20世紀の専制、権威主義からの教訓20ヶ条の最初に、"忖度するな"(Do not obey in advance.)を挙げていました。"Ethical Blindness"は、置かれた状況への盲目的な同調や服従がもたらすものです。岡本氏はそれを”無責任の構造”と呼び、本書の著者らは、”コンテクスト”がもたらす"Ethical Blindness"と呼んでいます。

 本書は、最近の過去20年の企業の不祥事、Theranos, Uber, Wells Fargo, France Telecom, Boeing, Volkswagen, Foxconnを事例に共通する"Dark Pattern"を説明しています。過去に遡れば類例は多くありますが、Dmitry Chernov, Dider Sornetteの著書「Man-made Catastrophes and Risk Information Concealment(邦訳:大惨事と情報隠蔽)」も本書と同様のケース・スタディを通じて、大事故から金融危機までに共通する要因を分析していました。これらの不祥事や大惨事の共通項は、情報隠蔽と職務倫理規定からの逸脱、その属する組織、あるいは環境への服従であると捉えることができるでしょう。

 本書では、"Dark Pattern"は、9つのブロックから構成されていると定義しています。ideology, leaders, language, goals, incentives, rules, faireness, groups, changes, からなり、詳細は本書の3章で解説されています。4章以後でケース・スタディとして取り上げた企業の不祥事は、それぞれこれらのブロックのいづれかの組み合わせで構成された"Dark Pattern"として解説してあります。

 「無責任の構造」の岡本氏はこうしたケース・スタディのような状況に遭遇した場合、”そのような状況で、最大の武器は、自身の専門知識の深さと個人としての個の強さ以外にはない。自分の置かれている状況を正確に、知的に理解することが大事である"と主張していました。ジンバルト氏も著書の最終章で”ルシファー・エフェクト”と、逆に作用する対処法を指南しています。本書の著者らは、"The Bright Pattern"と題する章において、組織的な努力によって、この"Dark Pattern"に対処し、倫理的に強いより健全な組織を構築する方法を示しています。

 本書の示す内容は、ビジネスパーソンの意思決定における価値や判断基準の形成にポジティブに寄与し、倫理的に堅牢な組織の構築とリスク管理に役立つでしょう。

-書評, 経済・産業
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