May Contain Lies: How stories, statistics and studies exploit our biases - and what we can do about it.
Alex Edmans
嘘を含んでいるかもしれない:どのようにストーリー、統計、調査研究が私たちのバイアスにつけ込むか、私たちがそれについてできること。
嘘を含んでいるかもしれない
著者は、私たちの日々の生活に影響する誤った情報が氾濫している複雑な現代社会において、より賢明に考え、正しい判断を行う上でのノウハウをわかりやすくまとめています。
心理的なバイアスは人の判断に影響します。
筆者は以下の短いエッセイで著書の言説を引用しましたが、著者は、”言説は事実ではない”という章を設けて引用自体も問題の一つとなりうることを示しています。
なぜならそれは不正確かもしれない。引用は文脈の範囲外かもしれない。そのような引用はセンテンスの一部であるか、チャートからバーを切り出したものかもしれない。
コンテキストから一部を切り出した場合、著者の本意とは異なる内容を示す場合もあります。著者は本書において、そうした錯誤を生じさせる原因をリストにあげて解説しています。
著者は自らの体験から以下の二つのことを学びます。
- 私たちはほとんどどのような意見であっても、たとえそれに欠陥があって、後にその偽りが剥げることがあっても、その意見をサポートするレポートを書くことができます。時事問題への関心は多くの研究を惹きつけるため、あなたはそれらから選ぶことができます。その証明として、”研究結果は〜と示します。研究では…がわかっています。”のようなフレーズを安っぽく使います。
- 政府の報告のような私たちが信頼できると考えているソースは、まだ信頼できないかもしれません。政策立案者、コンサルタント、学者によるものあっても、どのような報告も人によって記述され、そして人間はバイアスを持つのです。
著者は事例を通して、私たちが影響されているバイアスを明らかにします。多くの例は私たちがいかにリサーチから影響を受けているかを示します。私たちは、たとえ学術的な論文を読まないとしても、ブラウザで選択し、SNSで共有されている記事を開くことで、リサーチに関して読んでいます。専門家の意見を聞くときはいつでも、インフレーションがなぜそう高いのか、子供にどのように教えるか、私たちはリサーチに関して尋ねています。
いくつかのケースで誤った情報は致命的になります。
コロナパンデミックの時に、USAの大統領だったドナルド・トランプ氏は,hydroxychloroquineが治療になること、薬の歴史的なゲームチェンジャーになるとツィートしました。ある女性は、魚の水槽のクリーナーのラベルに’chrloroquine’の記載があるのに気づきました。彼女と夫は、ウィルスから保護されることを望み、それを飲みました。女性は危篤になった後、助かりましたが、夫は病院で亡くなりました。
この例のソリューションはシンプルです。事実を確認すること。それを飲む前に薬品が安全なことを確認することは明白でしょう。
知識を持つだけでは不十分で、それをいつ使うか、どのように使うか知る必要があります。バイアスは、私たちの知識を忘却させる原因になります。
本書は三つのパートからなっています。バイアス、問題、そのソリューションです。
まず判断を誤りに導くバイアスに関して解説し、問題のパートで推論の梯子という概念が導入されます。著者は、判断や推論における全体の問題に関して、六つの梯子を設けています。それは、
- 証明
- 証拠
- データ
- 事実
- 言説(statement)
という階段を登っていくことです。梯子の各ステップに一つの章を割いて、そのステップで錯誤を導く問題を解説しています。最後のパートでこれらの問題に対するソリューションとして、より賢明に考えるための方策を提示しています。
バイアスに関しては二つの心理的なバイアス、確証バイアスと白黒思考について記します。情報を誤解させる二つの大きな要因です。著者はいくつかの実証的な事例を挙げて、確証バイアスを明らかにしていきます。
シリコンバレーバンクのケースを見てましょう。
預かり金を2019年から2021年の間に3倍に増やした。彼らは余剰資金を、平時では安全資産であるUS T-Bondsにおいた。しかし、彼らの内部モデルでは、金利が上昇すれば、深刻な損失が発生することを予期していた。この警告に留意するより、エグゼクティブたちは、最小のリスクを予期するようにモデルの仮定を変更した。彼らはそれが、彼らの好みでないモデルだとわかると、それを破棄した。SVBは2023年に破綻した。
著者は簡単な質問をすることでバイアスされた解釈を見つける方法を提示しています。
確証バイアスは拡散しますが、私たちが直面する情報の全てのケースに適用されるものではありません。認知がなければ、確証バイアスはありません。そのため、クリアな頭でこれらの問題に取り組むことができます。
確証バイアスともう一方のバイアス、白黒思考は、私たちが、そのトピックに事前の視点がない時ですら、常に何かをいいか悪いかで見なすことにあります。その思考を検出するためには、:その状態は全ての設定に適用可能と主張できるか尋ねてください。
二つのバイアスが情報を解釈するとき、私たちは不注意な失敗の原因となることについて議論します。確証バイアスは、私たちに事前の視点があるときに適用し、白黒思考はそれがないときに現れます。これ等のバイアスは相互に補強します。
2番目の"問題"の章で著者は二つのバイアスから発生する異なる問題を探ります。私たちは、事実のための言説、データのための事実、証拠のためのデータ、証明のための証拠について錯誤します。
私たちが間違った推論の梯子を上らないことを確認するために、いくつかの簡単な質問を紹介し、Appendixに簡単なチェックリストとして、それ等がまとめてあります。
推論の梯子
推論の梯子とは、言説( statement )、事実( Fact )、データ、証拠、証明、という階段を登っていくことでした。これらそれぞれの階段を登る際に錯誤を生じさせる原因を事例を交えて解説しています。各章の章末に各ステップにおける錯誤原因とそれを明らかにするための簡単な質問がまとめてあります。
たとえば、事実からデータの階段を登る際の、バイアスから発生する錯誤の問題に関して、著者がまとめている結果を抜粋すると、
ソリューション
最後の章で問題に対するソリューションを記述しています。
これらの問題に関するソリューションは、個人レベルから組織レベル、社会レベルへ三つに大別してよりよく考えるように取り組むことを提案しています。
- 個人として賢明に考えること。
- もっと賢明に考えるる組織を作ること
- より賢明に考える社会を作ること
この中で著者が提案する組織的な努力に関するソリューションのエッセンスを抜粋すると
Appendixにさらに賢明に考えるためのチェックリストが収録されています。
このチェックリストは、不注意な失敗を避け、誤った推論を導かないために、簡単な質問を通して誤りを確認できるものなっています。
- Thinking fast and slowの反射的な思考です。ダニエル・カーネマン「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?」 ↩︎